「ルパン三世 PART5」連続インタビュー企画【第4弾】

「ルパン三世 PART5」
連続インタビュー企画【第4弾】

  • 綾奈ゆにこ

    (第18話「不二子の置きみやげ」脚本)
  • 時雨沢恵一

    (第19話「7.62mmのミラージュ」脚本)
  • 西田シャトナー

    (第20話「怪盗銭形」脚本)

[ 前編 ]

■まず、依頼があった時のことを教えてください。

【時雨沢】 それはある5月のキャンプ帰りの時でした(笑)。帰宅して車を駐車場に止めると、大河内(一楼)さんからメールがありまして……。メールが来るなんて珍しかったので「飲み会の誘いかな」と開いてみたら「『ルパン』をやることになりました」と。すごい、と思ったら「つきましては、脚本を書きませんか?」と続いていたんです。「お忙しいと思いますが……」とあったんですが、「忙しくてもやります!」と即レスしました。返事が遅れて、ほかの人に依頼が回ったら大変ですから(笑)。 西田 俺も大河内さんから連絡がほしかったなぁ……。まぁ当時はお会いしたことはなかったんですけどね(笑)。

【一同】 (笑)。

■西田さんはどんな経緯でしたか?

【西田】 そもそもお芝居でお世話になっているプロデューサーのところに「演劇方面で、『ルパン』の脚本を書ける人がいないか」というような問い合わせがあったそうなんです。それでそのプロデューサーが僕の名前をあげてくださって。で、僕のほうにも電話をいただいたんですが、なかなか単刀直入には言ってくれなくて(笑)。まず「シャトナーさん、アニメ脚本に興味はありますか?」。ここで「興味ないって答える変な奴はいないだろう」と思いつつも「興味はありますよ」と答えると今度は、「テレビシリーズなんですが……」と小出しにして「いやいや、興味あるって言ってるじゃん」と(笑)。ようやく最後に「『ルパン』に興味はありますか?」と言われて。「あるに決まってるやん!」と(笑)

【一同】 (笑)。

【西田】 僕は今でも2週間に1回ぐらいのペースで『ルパン三世VS複製人間』を見ているんですよ。めっちゃおもしろいですから。雑談でも『ルパン』の話は多いし、演劇の現場でも役者にいろんなシーンの例え話として『ルパン』の話題を出しているんですよ。

■綾奈さんは3人の中では、唯一のアニメ脚本家専業ですね。

【綾奈】 わたしも大河内さんからメールをいただきました。

【西田】 ええっ、そんな2人とも……(笑)。

【綾奈】 (笑)。以前から面識はあったのですが、お仕事の話をいただいたのは初めてだったので、すごく嬉しかったです。大河内さんは最近、1人で脚本を書かれることが多いので、一緒にお仕事できる機会はそうそうありません。わたしもすぐに「やります!」と返事をしました。1話完結話の脚本は各業界から1人ずつ呼ぶ形になっており、その内の一人に選んでいただけて大変光栄です。

■綾奈さんはこれまで『ルパン三世』にどんなイメージを持っていましたか?

【綾奈】 世代的にTVシリーズの放送を見たことがなく、実はあまり馴染みがなくて……ちゃんと見たことがあるのは、家にDVDがあった『ルパン三世 カリオストロの城』くらいで。これは勉強しないといけないと思い、大河内さんから薦められた「死の翼アルバトロス」(第2シリーズ145話)や「さらば愛しきルパンよ」(第2シリーズ第155話)を見たりしました。

【時雨沢】 その2本はおもしろいですよね。顔がいつもと違うんで、子供心に驚きましたけれど。

【綾奈】 『ルパン三世』ってすごく幅があって、話数ごとにテイストが違うんですよね。同じシリーズ内でも全然違うので、どうしようかなと思いました。それで、友人に宝塚のDVD(雪組公演『ルパン三世 ―王妃の首飾りを追え!―』)を借りまして。

【西田】 すごいなぁ。そこからなんだ(笑)。

【綾奈】 宝塚はきっと『ルパン三世』を知らないお客さまに向けて作っているだろうと。逆にいちばん大事な“キャラクターの核”を掴むには向いているんじゃないかと思ったんです。

【西田】 宝塚はすごく勉強して作られますよね。僕も見てみたいなぁ……。

【綾奈】 ルパンがタイムスリップしてマリー・アントワネットに会うお話なんですよ。大河内さんからは「好きなように書いてください」と言われたのですが、キャラクターを掴まないと書けないので色々見て研究しました。コミカルなのが見たくて、『ルパン三世 お宝返却大作戦!!』とか……ルパンたちが女装したりする(笑)。

■時雨沢さんや西田さんはお話のアイデアには困りませんでしたか?

アニメ ルパン三世 PART5

【西田】 僕は最初の打ち合わせの段階で、もういきなりプロットを3案持っていったんですよ。その中に「怪盗銭形」はもうありました。あと演劇畑ってことで「ルパンと不二子がロミオとジュリエットを演じる」というものもありましたね。その中では「怪盗銭形」がいいなという話がもう出ていて。それで最初の打ち合わせが終わって、「じゃあ、次までにもうちょっとちゃんと考えてきますね」といって、次はプロット8案持っていったんです(笑)。

【一同】 (笑)。

【西田】 これは正直、野心もあって、どうやら自分に発注される脚本は1本らしい、と。でもおもしろそうなプロットを出したら、もう何本か書くチャンスがもらえるんじゃないかなと思ったんです。それは結局、叶いませんでしたけれど(笑)。

■銭形には何か思い入れがありましたか?

【西田】 原作のモンキー・パンチ先生がある単行本のコラムで「アニメはすごく面白い」と言いながらも、銭形はルパンの最大のライバルであり明晰な頭脳の持ち主なのに、アニメはドジなコメディーリリーフになってしまっているのが残念というニュアンスのことをおっしゃっているのが印象に残っていました。また、特に僕の好きな第1シリーズでは、ルパンを逮捕しつつも、脱獄されたらどこかで安心している銭形(第4話「脱獄のチャンスは一度」)なんて側面も描かれていて、銭形のそういう面が僕は好きだったんです。今回はいろんなプロットを出して、その中に次元や不二子の話もあったりはしたんですが、銭形を描くなら、そういう有能で人間味の感じられる銭形にしたいなと思いました。

■時雨沢さんはどういう形でアイデアをまとめていったのでしょうか。

【時雨沢】 銃ネタで書きたかったので、自然と次元のエピソードになりました。内容的にアクションが多めになることは想像がついたので、「ハードなアクションをやらせてください」とリクエストしたんですが、これがOKいただけたのはありがたかったですね。次元とミラージュの対決だけだと、ルパンのほうが手持ち無沙汰になってしまうので、敵役のジルベルスタインとチェスをさせることにしました。あと今回のルパンたちは若者というほど若いわけでもない、と聞いていたので、なら次元の傭兵時代の仲間に成長した娘がいてもいいだろうと考えたんです。最初のアイデアから細部はだいぶ変わりましたが、コンセプトはまったく変わっていませんね。

【西田】 そういえば時雨沢さんと打ち合わせが一緒になった時もありましたね。その時、モデルガンをめっちゃ持ち込んで説明されていましたよね。すごいなーと思いました。 時雨沢 そうですね。資料は持ち込んだり、メールで送ったり。絵コンテもチェックさせてもらったりしました。

■時雨沢さん、西田さんはアニメの脚本を実際に書かれてみていかがでしたか?

【時雨沢】 自分の小説のアニメ化で、大体の予想はついていたんですが、だいたい30分枠だと電撃文庫30ページ分ぐらいなんです。ボリュームが少ないといえば少ないですね。 西田 僕は普段は自分で(演劇作品を)演出しているんですが、すごく芝居が早口なんです。だから一般的に50ページ分ぐらいの時間の中で、80ページ分ぐらい入ってしまう(笑)。でも今回は、自分で演出するわけではないので、ちゃんと監督の求めているページ数にしようと考えました。だから普段はト書きもめちゃくちゃ多いんですけれど、削りました。初稿の時は少し長かったので「内容はいいけれど、短くしてほしい」と言われて、そこで何シーンか削って、2ページぐらい減らしました。それでも完成した映像は最終稿よりさらに何シーンか少なくなっていましたね。そこが未熟というか、現場が求めている密度では上手く書けていなかったんだなと反省しました。……ただ自分としてはもっとゴリゴリ修正を求められるんじゃないかって覚悟をしてたんですよ。「お前はアニメが分かってへん!」とか「演劇とはちゃうんや!」とか。

アニメ ルパン三世 PART5

【一同】 (笑)。

【西田】 だから実質1.5稿ぐらいで決定稿になって、「あれ、もっと関わってたかったな」となったのが本音ですね。

■綾奈さんは、トイレネタでした。

【綾奈】 トイレ、好きなんですよね(笑)。空間として好きで。キャラクターの生活感も出せますし、コミカルに楽しく書けそうだなと。あと、アジトの美術がすごく素敵だったんです。他のエピソードであまり使われておらず、もったいないなと思ってアジトを舞台にしました。そこから一歩も出ない、ルパン版『やっぱり猫が好き』みたいな、日常ものを書こうと決めたのですが……その後、結構迷走しました。

アニメ ルパン三世 PART5

※今回掲載した前編に加え、未公開の後編を含めたインタビュー
全文を2018年10月24日(水)に発売となる
<Blu-ray&DVD Vol.4>封入特典:特製ブックレット内に掲載!

(インタビュー/執筆:藤津亮太)