「ルパン三世 PART5」連続インタビュー企画【第2弾】

「ルパン三世 PART5」
連続インタビュー企画【第2弾】

  • 津田健次郎(アルベール・ダンドレジー役)

[ 前編 ]

■『ルパン三世』ファンを公言されている津田さんですが、新キャラクター、アルベール・ダンドレジーを演じられていかがでしたか?

【津田】 子どもの頃から大好きだった作品の世界にいることが、もうシンプルにうれしかったですね。じつはPART4にも参加させていただいたのですが、やはりレギュラーで演じさせていただくのは全然違いました。

■PART5は、アルセーヌ・ルパンの国フランスが舞台。描かれるのは現代の“デジタル社会”です。そうした設定、そしてアルベールというキャラクターの第一印象はいかがでしたか?

アルベール

【津田】 設定自体はとても新鮮でした。とくにデジタルに関しては、往年のルパンの世界観との違和感がまったくなくて、大河内さんたちスタッフの方々のお力だなと、驚きました。 アルベールについては、当初はちょっと冷たい感じのひねくれたキャラクターなのかな、という印象でした。それが、回を追うごとに変わっていった。冷たさや皮肉っぽいポーズはあくまで仮の姿だとわかって、どんどん楽しくなりましたね。

■アルベールは『ルパン三世』の原作者であるモンキー・パンチ先生の「これからも生き続けるような、長くルパンたちに関わってくるキャラクターを」という願いから生まれたのですよね。一見紳士的で、ミステリアス。ルブランの「アルセーヌ・ルパン」シリーズも好きなので、苗字が「ダンドレジー」であることにもときめいていました。

【津田】 好きな方はピンとくるらしいですね。プロデューサーの浄園さんによると、その苗字でルパンの血縁だとわかるとか。外見もちょっと似てますよね。

■PART5はキャラクターたちの掘り下げも深くて斬新ですが、中でもアルベールの存在は、ルパンの過去やルーツに最も近い。重要な役どころですが、どのように役作りしていきましたか?

【津田】 初回から、現場で立ち上げていったという印象です。第1話の収録では、先の展開を把握していないので、なんとなく悪いやつの芝居を用意していったんです。そうしたら音響監督の清水さんから「もうちょっと普通で」というオーダーがあって。「アルベールは悪役ではない。そういうふうに見えますけど、ルパンと因縁があるだけなんです」という説明があり、少しずつ調整していきました。 アルベールは司法警察の上層部にいるエリート。一見冷たくて黒幕みたいに見えるけど、本質は、かつてルパンとともに泥棒稼業をやってた頃にあるんですよね。エリートのアルベールは仮の姿。「フランスを盗む」という大仕事のために、いまの人格を作り上げて出世街道を走っている、と理解して演じていました。ベースは泥棒だぞ。ルパンとタッグを組んでた頃から、微塵もブレてないんだぞと。

アルベール

■ルパンの周囲には、次元や五ェ門、不二子というルパンファミリーや、銭形警部のような不思議な敵対関係があります。そのどれでもないルパンとアルベールの関係性を、津田さん自身はどう捉えていますか?

【津田】 ライバル、ですかね。物語的にはそうなりましたよね。最初は騙しあいのニュアンスが強いけど、共闘してからは距離感が近づいていく。そしてまた離れる。距離感が変化するのも、ライバルだからこそかなと。

■夢の中でルパンに「お前、泥棒に向いてないぜ」と言われたアルベールが、うなされながら目覚めるシーンが印象的でした。

【津田】 くやしかったんでしょうね。でもそこはアルベールなので、同じような言葉をルパンに投げかけている場面もあるんです。やられたらやり返す。その辺が本当に対等なんですよね、彼らは。

■栗田貫一さん演じるルパンとの掛けあいはいかがでしたか?

【津田】 “ルパン節”というのは、要するに自由なしゃべりだと思うんですね。“アルベール節”はそれと似ているけれど、決して同じではない。だから芝居をするときには、「(栗田さんに)引っ張られちゃいけない」という思いでいましたね。 栗田さんは同じルパン節でも、ここは自由さを抑えてシリアスに、ここはより華やかに、と場面場面でずいぶん印象が違うんです。それを感じながらのやりとりは、ほんとうに楽しかったですね。僕の話し相手はほとんどルパンだけ(笑)。ほかは政治的なやりとりとか、部下とのやりとりでしたからね。

■感情が乗るシーンの相手は、すべてルパンでしたよね。ちなみに、話してみたかった好きなキャラクターや、お気に入りの場面などはありますか?

ルパン

【津田】 次元も五ェ門も不二子ちゃんもみんな好きなのですが、やっぱりなんといってもルパンが好きなので、そこは大満足です。ストーリーもルパン中心に進んでいきますしね。その中で、アミちゃんという、とても現代的な少女が登場します。PART5のサブテーマである“デジタル社会”の要素も背負っている少女。彼女が笑うようになったり、照れたり、心を開いて感情が表に出はじめたときは微笑ましくなりましたね。 シーンとしては、やっぱりルパンファミリーが勢揃いして、軽妙に減らず口を叩いている場面。そういうやりとりがたまらなくいいんですよね。もちろん、シリアスに「おお!」「なるほど!」と心が動く場面はたくさんありましたが、なんでもないやりとりほど嬉しくなるんです。現場でもそうでした。ルパンファミリー勢揃いのシーンは、アルベールはだいたい出てなくて、脇から見ているので(笑)。現場の空気含め、なんでもないところにぐっときちゃうんですよね。 ですから、何話のどのシーンと言われても出てこないくらいささやかなシーンが好きだったりします。特にラストのほうで、てんやわんやあって、でもルパンファミリーは変わらずに軽やかに活躍している。そういうみなさんのやりとりに、しょっちゅうぐっときてましたね。

■愛が伝わってきます。

【津田】 「栗田さん、ルパンっていいですよね」としみじみ語っちゃったりね。栗田さんは「ああ、そうお?」と、まんざらでもないみたいな返事をしてくれました(笑)。

■津田さんにとっての『ルパン三世』の魅力は、ルパンファミリーにあるのですね。

【津田】彼らには、いろんな角度があると思うんですよね。いろんな絆で結ばれていて、でも依存はしない。それぞれの役割をプロフェッショナルとして果たしているようなところもある。そういう豊かな関係性ですよね。 もちろん、物語自体も魅力です。今、メインスタッフの中に往年のルパンに関わっている方はほとんどいらっしゃらないそうなのですが――キャストだってオリジナルから演じてらっしゃるのは小林清志さんだけですが、世代交代した若い世代の「新しいルパンを作り上げていくんだ」っていう意気込みがすごいんです。50年続いてきたルパンの世界観をいかに損なわずに、新しくできるかを必死で考えてる。PART5は原点回帰でもありますからね。

■たしかにPART5は現代を描いているのに、驚くほど往年感がありますよね。

【津田】収録が始まる前、浄園さんに言われた「津田さん、今回フランスなんです。フランスはルパンの原点なんです」という言葉に、ものすごい気合いを感じましたね。まあ、プレッシャーをかけられたんだと思いますけどね。がんばれよって(笑)。 世界観を守るため、躊躇しない勇気も感じていました。人がちゃんと死ぬんです。それって、勇気がいる表現ですよね。そこを描ききることへの感動もありました。

■関連しているかもしれませんが、アルベールが活躍する第二幕には1950~1970年代のフランス映画(フィルム・ノワール)の匂い立つような雰囲気を感じました。「男同士の友情と裏切り」という題材や、大野雄二さんの音楽の効果でしょうか?

【津田】そうですね。空気作りにも、ものすごくこだわっていらっしゃいました。極力説明をしないで、空気を作っていく工夫が、随所にあったと思います。たとえば、演じていて「このシーンってストーリー上必要かな」と思えるようなシーンが、結構描かれるんですね。それによって、空気が生まれるのがわかるんです。アルベールは男の人と暮らしてますよね。現代らしい設定ではありますが、物語的に必要かな、となりませんか?

■たしかに。あれを描かなくても、ルパンとの物語は描けますよね。

【津田】そうなんです。それをあえて描く。煙草をすっと吸わせてもらってたり、あの描写が入ることでふわっと空気が生まれる――そういうシーンが随所にあるんです。ふわっの積み重ねで空気感が作られ、匂い立つんだな、と感じました。 『ルパン三世』には昔から、そういうところがありますよね。ルパンファミリーは、大事なことほど言葉にしませんし。関係性や空気を場面全体で語るというのは、もしかしたら大人の表現なのかもしれません。現代のアニメには説明過多のものが多いですから。あえてそこをはずしていくって冒険ではあるけど、やっぱりルパンは大人の作品です。一見軽妙に、わあきゃあやってるように見えてね。ものすごくクールなんです。

■わあきゃあやってるのも、大人の余裕なんですよね。

【津田】そこが『ルパン三世』の魅力ですよね。

(インタビュー/執筆:髙野麻衣)

※今回掲載した前編に加え、未公開の後編を含めたインタビュー全文を2018年8月22日(水)に発売となる
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